2025年4月2日、トランプ米大統領は世界各国からの輸入品に「相互関税」を課すと発表しました。
この政策では、全ての国に一律10%の関税をかけた上で、国・地域ごとに異なる税率を上乗せします。
特に中国に対しては34%の相互関税が課されることになりました。
トランプ大統領は既に中国に対して20%の追加関税を課していたため、今回の措置と合わせると中国製品への関税率は合計で少なくとも54%に達することになります。相互関税は4月5日に10%、4月9日に24%と段階的に実施される予定です。
2. 中国の対抗措置
中国は即座に対抗措置を発表しました。中国財政省は4月4日、米国の相互関税への報復として、4月10日から全ての米国製品に34%の追加関税を課すと発表しました。これはトランプ政権が発表した中国への追加関税と同率を適用したものです。
さらに中国政府は以下の追加措置も発表しました
- レアアースのうち中・重希土類について、米国への輸出を4日から規制
- 米企業16社を輸出管理リストに追加し、対象企業への両用品目の輸出を禁止
- 「信頼できないエンティティー・リスト」に米国の11団体を追加
中国商務部はアメリカに対し、相互関税を「直ちに取り消す」よう求め、「自国の権利と利益を守るために、断固として対抗措置を取る」と表明しています。
3. 経済的影響
今回の相互関税措置による経済的影響は深刻なものと予測されています
中国経済への影響
- 大和総研の試算によれば、累計54%の追加関税により、中国の実質GDPは2.0%押し下げられる見込み
- 中国の2025年の実質GDP成長率は4%を割り込む水準に落ち込む可能性が高い
- 中国は利下げ、預金準備率引き下げ、追加の財政政策など、内需を刺激するために金融・財政政策を総動員する見通し
日本経済への影響
- 日本に対する相互関税率は24%で、5日から段階的に実施される
- これにより日本の実質GDPは短期的には0.6%(2025年)、中期的には1.8%(2029年)程度下押しされる見通し
世界経済への影響
- 専門家は米国の相互関税措置が「世界経済にとって大打撃」になると警告
- トラディション(ロンドン)の市場・株式ストラテジストは「これが終わる見込みは薄く、市場はネガティブに反応している。投資家は貿易戦争の報復合戦を懸念している」と述べている
4. 相互関税の背景と他国への影響
トランプ政権は「悪質な国」として特に高い税率を課した国では、東南アジア諸国が目立ちます
- カンボジア:49%
- ベトナム:46%
- スリランカ:44%
EU(欧州連合)に対しては20%、日本には24%の相互関税が課されます。
5. 今後の展望
米中間の貿易戦争は2018年から続いていますが、今回の相互関税措置によりさらに激化する見通しです。中国は利下げや追加の財政政策などを通じて内需を刺激しようとするでしょうが、トランプ政権による関税の影響を完全に相殺することは難しいと予想されています。
多くの専門家は、この貿易摩擦が世界経済全体の減速につながる可能性を指摘しており、市場はこの先の展開に神経質になっています。
この貿易戦争の影響は米中二国間にとどまらず、グローバルサプライチェーンを通じて世界経済全体に波及する可能性があります。各国政府や企業は、この状況に対応するための戦略を模索している段階です。
6. 日本政府の基本姿勢
首相の見解と外交的対応
石破首相は4月3日の記者会見で、アメリカの関税措置について「極めて残念であり、不本意に思う」と述べ、WTO協定や日米貿易協定との整合性に「深刻な懸念」を表明しました。首相は、日本がアメリカに対する最大の投資国であり、日系自動車メーカーが約616億ドルの対米直接投資と230万人の雇用を創出していることを強調しています。
石破首相は「私自身がトランプ大統領に直接話しかけていくことが適当であれば、最も適当な時期に、最も適切な方法で働きかけてまいる」と述べ、トランプ大統領との直接交渉も辞さない姿勢を示しています。
報復関税の検討
4月4日の衆院内閣委員会で、石破首相は「報復関税や世界貿易機関(WTO)とか、何が一番効果的なのかを考えていきたい」と述べ、報復措置を含めた対応策を検討する考えを表明しました。加藤勝信財務相も「関税定率法で定められている報復関税措置の発動も可能だ」と説明しています。
ただし、日本はエネルギーや農産品を米国からの輸入に依存しているため、報復関税に踏み切るのは難しいとの見方も強いです。
「米国関税対策本部」の設置
経済産業省は4月3日、米国の関税措置に対応するため「米国関税対策本部」を設置しました。この対策本部を通じて、関税措置の国内産業への影響を評価し、必要な支援策を実施していきます。
短期的な支援策
- 特別相談窓口の設置: 全国約1,000か所に相談窓口を設置し、中小・小規模事業者の相談に対応
- 資金繰り支援: 日本政策金融公庫のセーフティネット貸付の利用要件緩和
- 自動車部品サプライヤー支援: 「ミカタプロジェクト」による経営アドバイスや各種支援の紹介
- 補助金の優先採択: 生産性革命事業のものづくり補助金(総額3,400億円)、新事業創出補助金(総額1,500億円)の優先採択
- 国際取引支援: 日本貿易保険(NEXI)を通じた支援の実施
与党の動き
自民党は対策本部を設置し、4月4日には日本自動車工業会などの業界団体からヒアリングを実施しました。小野寺政務調査会長はアメリカのヤング臨時代理大使と会談し、関税措置の撤回を求めています。
公明党も政務調査会の関係部会による合同会議を開き、斉藤代表は「いかにこの難関を乗り越えていけるかが重要」と述べています。
野党の主張
立憲民主党の野田代表は「石破総理自らが、先頭に立って、じか談判し、日本の基本的な姿勢を示すことが大事ではないか」と述べ、首相の積極的な交渉を促しています。また「政府は、省庁横断的なチームを作り、総力を挙げて交渉すべき」と指摘しています。
4. 産業界の反応と要望
日本自動車工業会の片山正則会長は「一度サプライチェーンが壊れると修復が難しい」と懸念を表明し、短期的な資金支援を要望しました。
日本自動車部品工業会の茅本隆司会長も「日本の中で、ものづくりが空洞化していくことが非常に怖い。中堅・中小企業を含めて、非常にいい技術を持っているが、関税を機にそれが失われると、取り戻せなくなる」と警鐘を鳴らしています。
5.世間の反応は
日本企業にとっては代替供給先としてのチャンスであり、特に電子部品や高機能素材など、日本が強みを持つ分野で、アメリカ企業が調達先を中国から日本へと切り替える可能性大です。 中国市場でも米製品価格が上がれば、日本製の競争力が高まることになります。地政学的リスクの裏で、日本の存在感を高めるチャンスと見るべきです。
今の経済状況ではアメリカの方が不利になるだろうな。 世界中の国に難癖つけて不法とも言える関税を一方的に掛けるアメリカに反発する国や地域の方が圧倒的に多い。 現状アメリカより中国に依存する国が増えている中での関税でアメリカから中国に乗り換える国が増えればアメリカの影響力低下を避けられない。 トランプ大統領は強気な自画自賛しているけど、確実に反米感情が高まりアメリカに対して不信感も増える。 アメリカ第一主義こそが自由競争の弊害になっているからな。
相互関税と言うなら相手国も同じ関税率を掛けるのは当然の話。 そもそもアメリカがやってるのは相互関税ではなく、各国毎の輸入額に占める貿易赤字の割合を関税率に上乗せすれば赤字は無くなるという単純にしてとんでもない理屈で出された数字を基本としている。 かつて中国の横暴をアメリカをはじめとする西側が批判していたが、今やその構図は逆転し中国の方がまともなことを言っている状態。 これで中国が融和的にシフトしてアメリカに切られた国を取り込んでいったらアメリカは本当に取って代わられる可能性があるのでは。
6. 今後の展望
日本政府は、アメリカに関税措置の見直しを強く求めながら、国内産業への影響を最小限にするための支援策を実施する「二正面作戦」を展開しています。
今後、トランプ大統領との直接交渉が実現するかどうか、また報復関税などの対抗措置が実際に取られるかが注目されます。同時に、日本の自動車産業を中心とする産業界への影響を最小化するための支援策が、どの程度効果を発揮するかも重要なポイントとなります。
日本政府の対応は、外交的な交渉を継続しながらも、現実的な国内対策を迅速に実施する方針が明確です。特に自動車産業のサプライチェーン維持が最重要課題とされており、中小企業への支援に重点が置かれています。今後も日米間の外交交渉の進展と、産業界への影響について注視が必要です。